2011年1月18日火曜日

河合隼雄『子供の宇宙』

河合隼雄『子供の宇宙』

最近、児童文学に興味があり読みました。臨床心理学者の河合隼雄さんの書かれたもので、具体的な症例や児童文学から、子どもの心にある宇宙を読み解き、大人の子供への関わり方の重要性を説いています。
実際にあったこととは思えない偶然の数々と昔、子供の頃に自分の中に存在した宇宙を思い出し引き込まれて読んでしまいました。


以前、『前世療法』を読んだのですが、同じことを言っている部分が多々あり、驚かされています。世の中には常識では考えられない超越した世界と体験があるのかもしれない。実際に私も偶然が必然になっていく運命という道筋は何か超越的なものをいつも感じているのです。

絵を描くという行為の中にも偶然できたシミから新しい対象が生まれ、そこから世界ができていくとき、自分の意志ではなく無意識に手が動いていく感覚は一種超越的世界に触れている瞬間なのかもしれません。

ただ、この本ではこの超越世界で生きることは命の危険もあるのだとも言っています。
この超越世界はある意味、今の自分の内面の死を体験する場所でもあるからです。現在の自己の死を受け入れ、大人への世界へステップアップするのは子供にとって非常にエネルギーを要することでそれを拒絶して自殺する子供もいるのだそうです。
子供はこの超越世界と現実世界を行き来することで、自己の死と再生を繰り返し自立していくのだと書かれています。

子供は想像以上に多くのことを観察し、知っています。でも、それをなかなか言葉にはできないのです。だから大人は気がつかずに常識や誰が作ったのかもわからない道徳で子供の宇宙を圧殺していまうことが多い。大人も子供を通して、今自分にある宇宙を感じることができるのかもしれない。だから、時々子供の空想にとことんまで付き合ってみてもいいのかもしれない。きっと新しい発見があると思う。


『きいろいばけつ』という児童書があります。この本は子供が物事の本質をみているということをうまく表現していると思います。
あとがきに『大人にとってはとるに足らないものでも、子供は時として全宇宙をみることがある』と書かれています。
小学校一年生で母に買ってもらったときからとてもとても大事な本で読むたびに忘れかけていた本当に大切なものを思い出させてくれる一冊です。


気になった方は両方とも読んで頂けると嬉しいです。







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